Letter 視覚:霊長類成体を使った赤緑色覚異常の遺伝子治療 2009年10月8日 Nature 461, 7265 doi: 10.1038/nature08401 赤緑色覚異常は、長波長域(L)または中波長域(M)感受性の視覚光色素のどちらか一方が存在しないと起こり、単一遺伝子座による遺伝性疾患の中で最も多い。今回我々は、正常な色覚系がヒトと違って二色型である成体サルを用いた実験で、色覚異常の遺伝子治療が可能かどうかを調べた。二色型色覚の網膜に第三の錐体色素を加えることで、三色型色覚の受容基盤が作られた。これによって、色覚の新しい次元を担う神経回路の確立に必要な条件を調べる新しい道が開けた。古典的な視覚剥奪実験からは、発生中に確立された神経連絡では、生まれたときから存在しなかった入力の適切な処理ができないだろうと予想されていた。そのため、先天性の視覚障害の治療は、極めて若い時期に行わないかぎり効果はないだろうと考えられていた。しかし今回、二色型色覚をもつ霊長類成体に第三のオプシンを加えるだけで、三色型色覚を示す行動が生じることが明らかになった。したがって、三色型色覚は3種類目の錐体色素を加えるだけで生じ、初期発生過程は必要としない。これらの知見から、遺伝子治療によって成人の視覚障害を治療する可能性について、前向きな見通しが得られた。 Full Text PDF 目次へ戻る