Letter

医学:無症状のシカの糞便中に排泄される感染性プリオン

Nature 461, 7263 doi: 10.1038/nature08289

ヒツジのスクレイピーやシカ科の一部の種に発症する慢性消耗病(CWD)のような感染性プリオン病は、感染宿主の集団内で自然に伝播する。症状が現れている動物の排泄物および分泌物の中には、接触感染源と思われるものがいくつか見つかっているが、持続的流行にこれらが生物学的重要性をもつのかどうかは、依然としてわかっていない。今回我々は、CWDに感染しているが無症状のミュールジカ(Odocoileus hemionus)が、プリオン病の臨床症状が出現するかなり前に、糞便中にCWDプリオンを排泄することを示す。放射線照射したシカ糞便を、シカプリオンタンパク質(PrP)を過剰発現するトランスジェニックマウスに脳内接種したところ、神経症状の発症の7〜11か月前に5頭のシカから採取した15検体の糞便のうちの14検体が感染力をもつことが明らかになった。シカ糞便中のプリオン濃度は、疾患末期に同一個体から採取した脳組織中と比べてかなり低かったが、感染した1頭のシカが疾患の経過に伴って糞便に排泄する感染性物質の推定総量は、脳中に存在する総量にほぼ等しい可能性がある。感染したシカから糞便中へのプリオンの排泄が長時間にわたることは、シカの群れ内でのCWDの高い発生率および効率の高い水平感染力ばかりでなく、こうした疾患に感受性をもつほかのシカ科動物間でのプリオン伝播をも説明すると思われる自然的機序となる。

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