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遺伝:アイルランドのジャガイモ飢饉の原因となったジャガイモ疫病菌のゲノム塩基配列とその解析

Nature 461, 7262 doi: 10.1038/nature08358

ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)は、ジャガイモの最も重大な病原体であり、褐藻類や珪藻類などの生物に近縁な菌類様真核生物の独立した系統である卵菌類のモデル生物でもある。ジャガイモ疫病菌は、19世紀半ばにアイルランドで発生したジャガイモ飢饉の原因菌として飢饉と大量移民を発生させ、人類史に大きな影響を及ぼした。この菌は今日でも、世界第四の食用作物であり、世界人口をまかなう主要穀物の重要な代替作物でもあるジャガイモに、最も壊滅的な病害を与えて世界の農業に影響を及ぼしている。現在、疫病による世界のジャガイモ生産の損失は、控えめに見積もっても年間67億ドルに上る。この大きな被害をもたらす病原体は、遺伝的抵抗性品種などの防除戦略に対して極めて短時間で適応するため、対処が困難である。今回我々は、ジャガイモ疫病菌のゲノム塩基配列を報告する。そのゲノムは約2億4,000万塩基で、現在配列が知られているクロムアルベオラータ類のゲノムの中で間違いなく最大で、かつ最も複雑である。この巨大化は反復DNAの増加によるもので、こうしたDNAがゲノムの約74%を占めている。別の疫病菌(Phytophthora)属菌2種とのゲノム比較解析で、分泌性病害エフェクタータンパク質からなる特定ファミリーの急速な遺伝子入れかわりや大規模拡張が明らかになった。その中には、感染時に発現が誘導される遺伝子や宿主の生理特性を変化させる活性をもつと推定される遺伝子が多数含まれている。高速で進化するこのエフェクター遺伝子群は、ジャガイモ疫病菌ゲノムの中でも非常に動的で拡張した領域に局在している。このことが、宿主植物に対するこの病原菌の迅速な適応性に重要な役割を果たし、その進化能力を支えていると考えられる。

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