Letter

遺伝:Arabidopsis属における爆発的レトロ転移の再現

Nature 461, 7262 doi: 10.1038/nature08351

植物ゲノムの大部分を構成しているレトロトランスポゾンは、RNA中間体の逆転写によって増殖する。植物では、長い末端反復配列(LTR)をもつレトロトランスポゾンの急激な増殖や欠失によってゲノムの進化が起こり、ゲノムの大きさや構成が変化することが多い。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)は、ゲノム全域にわたってトランスポゾンの正確な塩基配列がわかっており、またエピジェネティックな状態を変化させるトランス作用性の変異が知られているため、トランスポゾンの動態を研究するモデル生物として理想的である。今回我々は、ゲノムの高分解能タイリングアレイ、およびクロマチンリモデリング遺伝子であるDDM1DECREASE IN DNA METHYLATION)の変異体を用いた遺伝学的手法とゲノミクス手法によって、シロイヌナズナのさまざまな種類の内在性LTRレトロトランスポゾンが転移することを突き止めた。数世代を経たddm1変異体系統を複数用いてコピー数の増加を検出し、ジプシー型(ATGP3)、コピア型(ATCOPIA13ATCOPIA21ATCOPIA93)のさまざまなレトロトランスポゾン、またミューテーター型のDNAトランスポゾン1つ(VANDAL21)について、コピー数増加を確認した。爆発的なレトロ転移は、各トランスポゾンで互いに独立に、確率論的に起こっていることから、ほかの自己触媒的な過程のかかわりも示唆される。また、Arabidopsis属の近縁種で同定されたLTRレトロトランスポゾンの比較から、これらのレトロトランスポゾンの系統特異的な爆発的レトロ転移が、野外のArabidopsis属集団で実際に起こっていることが明らかになった。野外集団で最近起こった爆発的なレトロ転移は、セントロメア反復配列への挿入が多く、これはおそらく、遺伝子への挿入に比べて害が少ない。ddm1が誘発するレトロトランスポゾン増殖とゲノム再編成は、進化におけるトランスポゾンを介したゲノムの動的変化と似ており、このゲノム変化を制御する分子機構を直接研究するのに適した実験系と考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度