Letter 細胞:家族性自律神経失調症の患者特異的iPSCを用いた発症機序と治療のモデル構築 2009年9月17日 Nature 461, 7262 doi: 10.1038/nature08320 ヒトの誘導多能性幹細胞(iPSC)の単離は、ヒト疾患のモデル作製の新しい戦略となる。最近の研究では、疾患特異的なヒトiPSCの誘導と分化が報告されている。しかし、この分野での主要な課題は、iPSCで疾患に関連する表現型を示すこと、そして疾患の発症機序や治療のモデル化を可能にすることである。家族性自律神経失調症(FD)は、まれであるが、致死的な末梢神経障害で、転写伸長に関与するIKBKAP遺伝子の点変異によって引き起こされる。この疾患は、自律神経ニューロンおよび感覚ニューロンの減少を特徴とする。FDで末梢神経系が特異的に侵される原因やニューロン喪失の機構は、適切なモデル系がないためほとんど解明されていない。本論文では、患者特異的なFD-iPSCを誘導し、末梢ニューロンを含む三胚葉すべての細胞へ分化させることができたので報告する。FD-iPSC由来の純化された複数の細胞系統で遺伝子発現解析を行ったところ、in vitroでIKBKAPの組織特異的ミススプライシングが示された。患者特異的な神経堤前駆細胞では、正常なIKBKAP転写産物の発現レベルが特に低いことから、疾患特異性の1つの機構が示唆される。FDの発症機序の特徴がトランスクリプトーム解析と細胞を基盤とするアッセイによってさらに明らかになり、神経発生における分化や細胞の移動に明らかな異常があることがわかった。さらに、FD-iPSCを用いて、スプライシング異常の回復や、ニューロンの分化や移動の改善に対する候補薬剤の有効性を検証した。我々の研究は、ヒトの疾患の発症機序や治療に新たな知見をもたらすiPSC技術の有望性を示すものである。 Full Text PDF 目次へ戻る