Letter 細胞:誘導多能性幹細胞から作出された成体マウス 2009年9月3日 Nature 461, 7260 doi: 10.1038/nature08310 最近の画期的な実験によって、少数の転写因子を一過性に過剰発現させると、分化した細胞を胚性幹(ES)細胞に類似した誘導多能性幹(iPS)細胞に再プログラム化できることが示されている。このようなiPS細胞は、胚組織や卵母細胞を必要とせずに、細胞置換治療のために患者特異的な細胞種を作出したり、疾患のin vitroモデルを作製したりできる可能性をもつため、医学的に非常に有望だと考えられている。現在のiPS細胞株はES細胞に類似しているものの、四倍体胚補完法によって正期産マウスあるいは成体マウスを作出するという、最も厳密な多能性テストで実証されていないため、iPS細胞は生物一個体のすべてのタイプの細胞を作出する能力を十分備えているかどうかという疑問が生じる。このiPS細胞とES細胞間の差異が、直接の再プログラム化に本来的に備わっている制限を表しているかどうかはわかっていない。本論文では、マウス胚性繊維芽細胞の誘導性の遺伝的再プログラム化によって、iPS細胞だけに由来する繁殖力のある成体マウスを作出したので報告する。再プログラム化された繊維芽細胞に完全に由来する成体マウスが作製されたことで、卵細胞質の未知の因子への曝露なしに、分化した細胞のすべての特徴が胚レベルの多能性へ復帰させられることを示す。これらの完全な多能性をもつiPS細胞株を、発生的に多分化能が低い株と比較することによって、異なる多能性状態の分子マーカーが明らかになるかもしれない。さらに、iPS細胞に完全に由来するマウスは、iPS細胞由来の細胞や組織の機能、およびゲノムの安定性を評価する新しい手段となり、これは、細胞置換治療や研究利用におけるiPS細胞の有用性を立証するために重要である。 Full Text PDF 目次へ戻る