Letter 生理:四量体MscLの拡張した中間状態での構造 2009年9月3日 Nature 461, 7260 doi: 10.1038/nature08277 細胞がもつ機械力を感知してそれに応答する能力は、動物の触覚や聴覚、植物の重力屈性、細菌の浸透圧調節などの多様な過程の基盤となっている。細菌では、機械感覚は大コンダクタンス(MscL)、小コンダクタンス(MscS)、カリウム依存性(MscK)、微小コンダクタンス(MscM)機械受容チャネルにより仲介される。これらのチャネルは、「緊急開放弁」として作用し、急激な浸透圧低下ショック時の溶菌から細菌を守っている。これらのチャネルのうち、MscLは15年前に最初に同定・特性解析されて以来、盛んな研究が行われてきた。MscLは膜の張力変化によって直接、可逆的に開閉を行う。開状態では、MscLは非選択的な、コンダクタンス3 nSのチャネルを形成し、細菌膜の溶解限界に近い張力によって開閉する。以前に報告された結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の五量体MscLの分解能3.5 Åでの結晶構造は、閉状態あるいは非透過性のコンホメーションにあたる。MscLは複雑なゲート開閉挙動を示し、閉状態と開状態の間に複数の中間状態があって、それには非透過性の拡張状態と思われるもの1つと、透過性をもたない状態が少なくとも3つ含まれる。閉状態と開状態のMscLに関する解明は進んでいるが、中間状態の構造は、MscLの完全なゲート開閉過程を明らかにするために重要であるにもかかわらず、ほとんど解明されていない。今回我々は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)MscLの、カルボキシ末端短縮変異(Δ95–120)を有するSaMscL(CΔ26)の分解能3.8 Åでの結晶構造を報告する。SaMscL(CΔ26)は四量体チャネルを形成していて、2つの膜貫通へリックスがどちらも、開状態のチャネルで推定されているのに近い角度で細胞膜垂線から遠ざかるように傾斜していることは注目すべきである。これはおそらく、非透過性ではあるが部分的に拡張した中間状態に相当するのだろう。 Full Text PDF 目次へ戻る