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細胞:抗酸化物質およびがん遺伝子はマトリックス付着が失われることによる代謝障害を救済する

Nature 461, 7260 doi: 10.1038/nature08268

正常な上皮細胞の生存には、マトリックスへの付着が必要で、腫瘍細胞が本来の細胞外マトリックス(ECM)ニッチ外で生存できるのは、足場非依存性の獲得によるものである。ECM付着が適切に行われていない細胞を最も迅速に排除する機序はアポトーシスだが、最近の報告では、マトリックスを失った細胞でアポトーシスが阻害されている場合には、非アポトーシス性細胞死の過程が生存を妨げることが示唆されている。今回我々は、乳腺上皮細胞がECMから離脱すると、グルコース輸送が起こらなくなることでATP欠乏が生じることを明らかにする。ERBB2を過剰発現させると、EGFRの安定化とホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ(PI(3)K)の活性化を介してグルコース取込みが回復して、ATP不足が救済された。この救済は、抗酸化物質を産生するペントースリン酸経路を介したグルコースが刺激する流れに依存している。グルコースの取り込みが回復しなくても、抗酸化物質投与によってATP欠乏が救済される場合があることがわかった。この救済は脂肪酸酸化の刺激に依存し、ECMからの離脱によって誘導される活性酸素種(ROS)によって阻害されることが明らかになった。これらの知見の意味するところは、乳腺腺房内腔にあるマトリックスを欠く細胞でのROS増加という証拠や、また抗酸化物質がこのような細胞の生存を促進し、足場非依存性コロニー形成を促進するという知見によって裏付けられた。今回の結果は、代謝活性の調節へのマトリックス付着の重要性と、マトリックス環境の変化の中で抗酸化物質がATP生成を回復させて細胞を生存させるという予想外の機序を明らかにしている。

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