Letter 宇宙:火星で観測されたメタン変動は既存の大気化学と物理学では説明できない 2009年8月6日 Nature 460, 7256 doi: 10.1038/nature08228 火星上でメタンが検出されたことで、この惑星に過去もしくは現在、生命が存在している可能性が復活してきたが、メタンが非生物起源であるとする説も同程度の説得力がある。火星上で最近観測されたメタンの興味をそそる特徴は、メタン濃度が局所的に上昇し、季節とともに変化するようにみえることである。しかしながら、メタンは光化学反応に対して数百年という寿命をもつため、火星全球で均一に分布していると考えられている。本論文では、化学反応を組み込んだ火星の全球気候モデルを使って、火星メタンに最近観測された変動が、メタンの化学的性質に関する我々の理解にどのように影響してくるのかを調べた。その結果、局所的で一時的なメタンの放出がある場合でさえ、現在知られているような光化学反応では、測定可能なメタン濃度変化を作り出せないことがわかった。対照的に、火星の二酸化炭素大気の凝結-昇華サイクルが、観測されたものとは異なる大規模なメタン変動変化を引き起こしうることが見いだされた。最近報告されたものと似た局所的なメタン増加を再現するには、メタンの局所的な発生源がほぼ観測時期の間だけに活発だったとしても、メタンは200日未満で大気から消失しなければならないことが明らかになった。これは、標準的な光化学反応によって予想されるよりも600倍も速い、未確認のメタン消失過程の存在を意味している。火星大気でこのような迅速な消失が起こっていることを、ほかの微量ガス種について観測された分布と両立させるのは難しい。消失機構が火星表面だけで作用するとしても、観測結果を説明するためには、1時間程度というさらに短い時間スケールでメタン分解が起きなければならない。最近観測されたメタンの空間的、時間的変化が間違いないと確証されれば、これは火星上に有機物が残存するには非常に厳しい環境を示唆していると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る