Letter 環境:亜北極域の気候温暖化が加速する地下の泥炭からの炭素呼吸 2009年7月30日 Nature 460, 7255 doi: 10.1038/nature08216 未来の気候に関する現在の予測で最も不確実性が大きいものの1つが、陸上の炭素循環と気候の間のフィードバックである。北方の泥炭地帯には世界の土壌有機炭素の3分の1が含まれており、これは大気中の炭素量の半分以上に相当する。数百年から数千年前に形成された厚い泥炭堆積物の呼吸活性化を介する二酸化炭素(CO2)放出の気候温暖化による加速は、強い正の炭素循環-気候フィードバックとなる可能性がある。しかし、野外研究の期間の短さや相関的な性質、地中でのin situ呼吸測定、実験室で保温しながら行う呼吸測定に伴う擾乱のため、泥炭地帯、特にその深部に存在する炭素の長期的な温度感受性はいまだにはっきりしていない。本論文では、亜北極域の泥炭地帯で実施した2件の全生態系気候操作実験におけるCO2呼吸速度と呼吸によって排出されたCO2の同位体(13C)組成の擾乱のないin situ測定値を組み合わせた。その結果、約1 °Cの温暖化によって全生態系呼吸速度が春季には平均60%、夏季には平均52%加速し、この効果が8年以上持続したことが明らかになった。温暖化によって短期(植物関連)および中長期(泥炭土壌関連)の炭素呼吸過程の双方が刺激される一方、呼吸の加速の69%以上が、永久凍土上の活性層の底部(25〜50 cm)付近の泥炭に含まれる炭素に由来していることが見いだされた。したがって、気候温暖化は、従来の想定をはるかに超える規模で、泥炭地帯の広範囲にわたって地中に大量に蓄積された炭素の呼吸を加速している。今回の1地点のデータが、温暖化に対する北方泥炭地帯土壌の地球規模の直接的応答を示していると仮定すると、今後数十年で約1 °C気候が温暖化すると、地球全体で従属栄養呼吸が年間3,800万〜1億炭素トン増加すると推定される。今回の知見は、北方泥炭地帯に蓄積されている炭素の地球気候システムに対する大規模で持続的な正のフィードバックを示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る