Letter 進化:キンカチョウにみられる野生型の歌文化の新規確立 2009年5月28日 Nature 459, 7246 doi: 10.1038/nature07994 文化は一般的に、社会的学習を通じて後成的に受け継がれる形質からなると見なされている。しかしながら、文化の多様性には種に特有の制約があり、その起源はおそらく遺伝的要因にある。有名だが異論も多い例として、ヒトの言語にみられる普遍文法が構文の多様化を制約しているのかどうかという問題が挙げられる。スズメ類の鳴禽類は歌の学習を行うため、文化を研究するうえで生物学的に取り扱いやすいモデルとなる。スズメ類の種では歌に個体差があり、地理的に離れた集団には、地域によって歌の「方言」がある。種が異なれば歌の文化も異なっていることから、遺伝的制約の存在が示唆される。そのような制約がなければ、複数世代を経たり地理的に離れたりすることで、革新的変化や複製エラーによって無限の変形が生じるはずであるが、実際にはそのようなことは観察されない。今回我々は、隔離個体を創始者とする隔離コロニーに、複数世代を経て野生型の歌文化が生じるかどうか、もし生じるのであれば、どのように生じるのか、また、どのような種類の社会環境が必要なのかを確かめるために実験を行った。成長中に(学習モデルとなる)雄のさえずりを一切聞いていないキンカチョウ隔離個体は、飼育下あるいは自然コロニーでみられる野生型の歌とは異なる特徴をもった歌をさえずる。隔離個体が創始者となって次世代の教師役を受け継いでいく系統で、我々は、2つの社会的環境(教師と生徒のペアを外部の音を遮断した部屋に隔離した場合と、半自然状態の隔離コロニー)で教師役の世代間での歌の変化を定量化した。どちらの環境でも、生徒である若鳥は隔離されている教師個体を真似したが、歌のいくつかの特徴を変化させた。これらの変化は学習の世代を経るとともに蓄積された。結果として、歌は3〜4世代で野生型に進化した。したがって、種に特有な歌文化は、全く新規に出現することが可能である。今回の研究は、言語の変化や進化と類似点がみられる。我々は、量的遺伝学のモデルと同様に、歌文化を、隔離個体を創始者とする個体群において遺伝的にある程度コードされており、環境変数の影響を受け、出現するには複数世代を要する、複数世代にわたる表現型としてモデル化した。 Full Text PDF 目次へ戻る