Letter 物理:量子相転移点におけるバーディーン・クーパー・シュリーファー基底状態の破綻 2009年5月21日 Nature 459, 7245 doi: 10.1038/nature08008 固体および原子物理の進展により、量子物質の従来型の状態とエキゾチックな状態との隠れた関係が明らかになってきた。その重要な例として、従来型のスピンおよび電荷秩序に近いエキゾチック超伝導の発見や、冷却フェルミオン気体で実現し、銅酸化物超伝導体に対して予想されている長距離位相秩序からプリフォームドペアへのクロスオーバーが挙げられる。これらに共通するテーマは、両立し得ない基底状態が量子相転移によって連結されることである。転移点付近での量子揺らぎは、長波長の密度波や短いコヒーレンス長の凝縮体など定性的に異なる組織化原理間の競合の現れである。これらからは、反強磁性量子臨界点近傍でのみ生き残る揺らぎを媒介とした超伝導のような「保護された」相さえ生じる。しかし、連続な量子相転移を示すモデル系はほんの少ししか見つかっておらず、また関心を集めている系の多くは複雑な性質をもつことが、零温度不安定性近くでの相関や揺らぎをより完全な解明を求める努力を妨げている。本論文では、クロム元素に静水圧をかけると磁性が抑制されることを報告する。クロムは単純な立方晶金属で、微妙な形の遍歴型反強磁性を見せ、それは従来型超伝導体でみられるバーディーン・クーパー・シュリーファー(BCS)状態と形式上は等価となる。付随する電荷秩序を低温のダイヤモンドアンビルセル中で直接測定した結果、∼10 GPaの圧力下で、BCS類似の状態は破壊するが、遍歴型の電子と正孔の間の強い磁気相互作用は保つような揺らぎに駆動された相転移を発見した。クロムは、これまで研究された化学量論的な磁性金属の中では、量子相転移が連続であり、量子特異点へ実験により接近でき、また理論的に記述できる物質中での従来型の秩序とエキゾチック秩序との競合を直接探れる点で、特異な金属である。 Full Text PDF 目次へ戻る