微生物病原体は、哺乳類宿主への感染、あるいは疾患媒介動物への伝播に必要な発生事象を開始するのに環境からの合図を利用する。アフリカ睡眠病の原因となる寄生生物は、媒介昆虫であるツェツェバエに伝播すると、クエン酸あるいはcis-アコニット酸(CCA)に応答して生活環の展開を開始する。これには、寄生虫が低温に暴露されてCCAに高い感受性をもつようになることが必要であり、低温は夕暮れあるいは夜明けに採餌後のツェツェバエが遭遇する状態である。今回我々は、カルボン酸輸送体ファミリーのPAD(proteins associated with differentiation)が、この分化シグナルの感知に必要であることを突き止めた。PADタンパク質は、血流型で伝播可能な「stumpy-form(ずんぐり型)」の寄生生物の表面に発現し、少なくともメンバーの1つは温度調節を受け、低温で発現と表面への出現が増加するが、これはトリパノソーマのCCAに対する応答についての予想と一致する。さらに、RNA干渉を用いてPAD発現を遮断すると、低温ショック状態におけるCCA誘導性分化が起こらなくなり、CCAに対する高感受性が消失する。PADタンパク質は、これらの寄生生物の分化シグナルの分子変換器であり、また哺乳類宿主中でトリパノソーマが伝播段階にあるかどうかを識別できる表面マーカーの最初の例でもある。