Letter 生理:thyX遺伝子をもつ生物にみられる独特なチミジル酸生合成機構 2009年4月16日 Nature 458, 7240 doi: 10.1038/nature07973 DNA塩基チミンの生合成は、2′-デオキシウリジン-5′-一リン酸のウラシル部分のメチル化反応を触媒するチミジル酸合成酵素の活性に依存している。これまで知られているチミジル酸合成酵素はすべて、2′-デオキシウリジン-5′-一リン酸を活性化するのに活性化部位の1個のアミノ酸残基を必要とする。この作用機序は、ヒトチミジル酸合成酵素をはじめとする従来のチミジル酸合成酵素で実証されていて、作用機序に基づいてこれらの酵素を阻害する際に使われている。本論文では、酵素の求核性基なしで起こるチミジル酸生合成の例について報告する。この独特な生合成経路は、フラビン依存性チミジル酸合成酵素(FDTS)をコードするthyX遺伝子をもつ生物にみられ、いくつかのヒト病原体にも存在する。FDTSの触媒作用には、推定活性部位の求核性基が必要ないことがわかり、またこの残基の代わりに作用する別の求核性基も見つからない。その代わりに、1当量の水素化物イオン(2個の電子をもつプロトン)が還元型フラビン補因子から直接ウラシル環へと移され、中間体が異性化して2′-デオキシチミジン-5′-一リン酸が形成されることがわかった。これらの結果は、従来のチミジル酸合成酵素や、これまで知られている生物によるメチル化のどれとも、全く異なる連続化学反応を示している。今回の知見やここに示した反応機構を構造データと考え合わせれば、ヒトのチミン生合成にはほとんど影響を及ぼさずに、FDTSを選択的に阻害することができると考えられる。ヒトのいくつかの病原体はFDTSに依存してDNA生合成を行うので、今回の独特な生合成機構は抗生物質の標的として興味深い。 Full Text PDF 目次へ戻る