Letter 細胞:出生後の神経幹細胞からのニューロン新生にはクロマチン再構成因子Mll1が不可欠である 2009年3月26日 Nature 458, 7237 doi: 10.1038/nature07726 成体期を通じてニューロン新生を維持するエピジェネティックな機構については、まだほとんど解明されていない。トリソラックス群(trxG)とポリコーム群(PcG)の遺伝子産物は進化上保存されたクロマチン再構成系の成分で、それぞれ遺伝子発現の活性化、あるいは抑制に働いている。PcGに属するBmi1は出生後の神経幹細胞の自己複製に必要なことが明らかになっているが、trxG遺伝子の役割は不明である。今回我々は、trxGに属するMll1(mixed-lineage leukaemia 1)がマウスの出生後の脳でニューロン新生に必要なことを明らかにする。Mll1を欠失した脳室下帯神経幹細胞は、生存し、増殖し、効率よくグリア細胞系列に分化するが、ニューロンへの分化は著しく損なわれる。Mll1欠失細胞では、ニューロンへの分化を促すMash1(Ascl1ともよばれる)とグリア細胞への分化を促すOlig2の初期の発現は維持されているが、脳室下帯のニューロン新生を調節する下流の重要な因子であるDlx2が発現されない。Mll1欠失細胞でDlx2を過剰発現させると、ニューロン新生が回復する。クロマチン免疫沈降によって、Dlx2は脳室下帯細胞におけるMLLの直接の標的であることがわかった。分化中の野生型脳室下帯細胞では、Mash1、Olig2、Dlx2遺伝子座のヒストン3のリシン4が高度にトリメチル化されていて(H3K4me3)、このことはこれらの遺伝子の転写レベルと一致する。Mll1が欠失した脳室下帯細胞では、これと対照的に、Dlx2部分のクロマチンはH3K4me3とヒストン3のリシン27トリメチル化(H3K27me3)によって二重に標識されており、Dlx2遺伝子が適切に活性化されない。これらのデータによって、Mll1は、出生後の神経前駆細胞で二重にサイレンシングされている重要な遺伝子座を解放し、活発に転写される状態にするのに必要で、ニューロン新生は誘導するが、グリア細胞新生は誘導しないとするモデルが裏付けられる。 Full Text PDF 目次へ戻る