Letter 海洋:化学合成無機栄養生物の大増殖によるアフリカ大陸棚の硫化物に富む海水の無毒化 2009年1月29日 Nature 457, 7229 doi: 10.1038/nature07588 沿岸海域は世界の水産業のおよそ90パーセントを支えており、人類にとって重要な食料供給源となっている。人間活動によるこれらの海域の富栄養化は、重度の酸素欠乏や、多細胞生物に有毒な硫化水素の一時的発生につながり、沿岸生態系に壊滅的な影響を及ぼす。本論文では、硫化物に富む海水に覆われたアフリカ大陸棚のおよそ7,000 km2にわたる海域が、生物に有害な硫化物を酸化して、環境に無害なコロイド状硫黄や硫酸塩に変化させる細菌の大増殖によって、無毒化されたことを示す。複合的化学分析、化学量論モデル、同位体を用いた培養、16SリボソームRNAの比較解析、機能的遺伝子配列解析、および蛍光in situハイブリダイゼーションにより、この無毒化は、化学合成無機栄養生物による硝酸塩を用いた硫化物の酸化によって進行したものであり、主としてγ-およびε-プロテオバクテリアという2種類の細菌集団によって触媒されたことが示された。硫化物に富む海水中の細菌プランクトンの約20パーセントを占める化学合成無機栄養細菌は、魚類などの遊泳生物が生息する酸素の豊富な表層水と、硫化物に富む有毒な次表層水との間に緩衝帯を作り出していた。硫化物に富む海水の化学合成無機栄養生物による大規模無毒化が外洋系で観察されたのは、今回が初めてである。今回のデータは、次表層水の硫化物が細菌によって完全に消費される場合があり、したがって、低深度沿岸海域の遠隔探査や遠隔測定で見逃されかねないことを示唆している。つまり、大陸棚の硫化物に富む底層水は、従来考えられていた以上に一般的なもので、底生生物群集に対して重要な影響を及ぼしている可能性があるが、それがこれまで見落とされていたようだ。 Full Text PDF 目次へ戻る