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生理:低分子の混合物が線虫の交尾行動と発生を制御する

Nature 454, 7208 doi: 10.1038/nature07168

多くの生物で個体密度の感知と性的誘引は、小型分子によるシグナル伝達システムに依存している。線虫(Caenorhabditis elegans)では、個体密度は固有のグリコシドであるジデオキシ糖アスカリロース(アスカロシド)を介して感知され、この物質は、通常の幼虫期とは異なる、摂食せず強い耐久性をもつdauer幼虫期への誘導を促進する。さらに成虫の雄は、これまで同定されていない小型分子のシグナルによって、雌雄同体に誘引される。本研究では、C. elegansメタボロームの活性誘導分画を組み合わせることにより、交尾シグナルは、相乗作用をもつ3つのdauer幼虫誘導性アスカロシド(ascr#2、ascr#3、ascr#4)の混合物からなることを示す。このアスカロシド混合物は、非常に低い濃度では雄に対する強力な誘引物質として作用するが、dauer幼虫形成に必要とされるより高い濃度では、これらの化合物は雄を誘引せず、雌雄同体を忌避させるようになる。アスカロシドascr#2とascr#3は、重なる部分はあるものの異なる情報をもち、ascr#3は雄の誘引物質としてascr#2より強く働き、一方ascr#2は、dauer幼虫形成の促進においてはascr#3よりもやや強力である。ascr#2、ascr#3、ascr#4には強い相乗作用があり、さらにASK(amphid single-ciliated sensory neuron type K)と雄特異的なCEM(cephalic companion neuron)という2種類のニューロンが、ascr#3による雄の誘引に必要とされる。以上の結果から、線虫における雄の誘引とdauer幼虫形成は、共通したシグナル伝達分子セットに対する選択的行動応答と考えられる。したがって、このアスカロシドによるシグナル伝達システムは、生殖と発生の経路を結びつけるものであり、構造と濃度に依存してシグナル伝達分子の活性が変わる珍しい例である。

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