銅は、多くの細胞内酵素や輸送体の補因子である。銅は、ATP7AあるいはATP7B輸送体によって、細胞質から膜で囲まれた細胞小器官に運ばれ、分泌型および細胞内膜の銅タンパク質に結合する。銅不均衡症候群であるメンケス病とウィルソン病ではそれぞれ、ATP7AおよびATP7B輸送体の遺伝子に変異が生じている。細胞内膜の銅タンパク質は、トランスゴルジ網を経由した移行により銅を安定して取り込むと考えられており、トランスゴルジ網には初期エンドサイトーシス区画を経由する動的サイクルによりATP7Aが蓄積している。今回我々は、色素細胞特異的な銅含有酵素であるチロシナーゼが、マウスのメラノサイトのトランスゴルジ網中では、一過的かつ非効率的にしか銅を獲得できないことを示す。チロシナーゼには、メラニンの生合成を触媒するために、その後でメラノソームと呼ばれる特殊化された細胞小器官の中で銅が再度結合する。銅はATP7Aによってメラノソームに供給され、ATP7Aの一部はBLOC-1(biogenesis of lysosome-related organelles complex-1)に依存する生合成によりメラノソームに局在化する。以上の結果から、金属輸送体の細胞種特異的な局在化が、細胞内膜の銅含有酵素の金属化の維持に必要であることが示され、これは金属含有酵素の活性の空間的制御の巧妙な機構を明らかにしている。さらに、遺伝病であるヘルマンスキー・パドラック症候群の一種ではBLOC-1のサブユニットが変異を起こしているので、以上の結果はまた、銅輸送体の局在異常がこの症候群での色素沈着減少、そして、おそらくは他の全身性の欠陥の原因であることを示している。