Letter 医学:鳥インフルエンザH5N1型ウイルスのポリメラーゼPAC-PB1N複合体の結晶構造 2008年8月28日 Nature 454, 7208 doi: 10.1038/nature07120 鳥インフルエンザAウイルスの非常に病原性が高いH5N1型というサブタイプが最近出現したことは、人類の健康にとって世界的な脅威となっている。ウイルス複製の基礎となる機序の解明は、抗インフルエンザウイルス薬の開発に欠かせない。インフルエンザウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)ヘテロ三量体は、ウイルスRNAの複製と複写に重要な役割を担っており、3種類のタンパク質、PA、PB1とPB2を含んでいる。PB1はポリメラーゼ活性とエンドヌクレアーゼ活性をもっており、PB2はキャップ構造の結合に関与する。PAは、その機能があまりよくわかっていないが、RNAの複製とタンパク質分解活性に関係があるとされている。今回我々は、H5N1型鳥インフルエンザAウイルスのPA(PAC、257から716番目の残基にあたる)が、PB1のPA結合領域(PB1N、1から25番目の残基にあたる)と複合体を作った際の結晶構造を、2.9 Å分解能で報告する。PACは竜の頭に似た折りたたみをしており、その開いた「あご」でPB1Nを挟んでいる。PB1Nはポリメラーゼヘテロ三量体の形成を妨げる阻害因子として知られており、ウイルスの複製を止める。我々が得た構造は、PB1NのPACへの結合の詳細を原子レベルで明らかにし、新たな抗インフルエンザ治療薬の標的候補を示している。また、ヌクレオチド結合部位と考えられる領域と、ポリメラーゼ活性に関与していることが知られているいくつかの残基の役割についても論じる。さらに、ウイルスの複製と転写におけるPAの役割を検討するため、PACとλ3レオウイルスポリメラーゼの構造を比較し、得られていた低分解能の電子顕微鏡マップにPACの構造を当てはめることで、インフルエンザRdRpヘテロ三量体のモデルを提案する。 Full Text PDF 目次へ戻る