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疫学:不顕性感染とコレラの動態

Nature 454, 7206 doi: 10.1038/nature07084

多くの感染症で、感染者の一部は症状が軽微なため記録に残らず、そうした患者の割合は不明なままになる。この事実が、疫学的記録の解釈を著しく不確実なものにしている。大流行を引き起こす細菌性疾患の1つであるコレラの場合も同様で、症候性感染に対する無症候性感染の比率の推定値は3から100と広がりがある。直接的な証拠がないため、コレラの伝染、免疫、管理対策のような基本的な問題の知識は、不顕性感染の比率やその免疫学的重要性についての推測に基づいたものだった。本論文では、ヒトと環境中の感染源の両方について、高い無症候性感染比率と急激な免疫の減衰を組み入れたモデルが、コレラが風土病となっているベンガル地域の26県から得た50年間の死亡率のデータを説明できることを明らかにする。コレラの場合、無症候性感染の比率はこれまで考えられていたよりもはるかに高く、軽微な感染による免疫は以前の分析結果で示されていたよりもずっと速やかに減衰することがわかった。また、環境中の保有宿主(自由生活性病原体)が感染の直接原因となる場合は比較的少ないものの、コレラが風土病となるのにこのような保有宿主が不可欠なことも見いだされた。これらの結果は、不顕性感染が病気の流行パターンの解釈に重要であることを示している。複数の感染源と感染転帰、季節性、プロセス雑音、隠れ変数、測定誤差を組み込んだ動態モデルに基づく厳密な最尤推定を可能にする新しい統計手法は、より精密な仮説検証を可能にし、予想外の結果を得ることができる。今回の経験は、時系列データと機構モデルとのつきあわせによって、多くの感染症の動態に関する我々の理解が見直される可能性を示唆している。

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