Letter 細胞:胚性幹細胞自己複製の基底状態 2008年5月22日 Nature 453, 7194 doi: 10.1038/nature06968 多能性をもつマウス胚性幹(ES)細胞は、最初に報告されてから30年の間に、フィーダー細胞、条件培地、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、ウシ胎児血清、および血清抽出物のさまざまな経験的組み合わせによって、樹立され、維持されるようになった。このためES細胞の自己複製は一般に、専用の転写回路の多因子刺激に依存すると考えられており、そうした刺激の中でも特に目立つのがサイトカインによるSTAT3活性化である。しかし、本論文では、外部からの刺激はES細胞の樹立、増殖および多能性には重要ではないことを示す。自己複製は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼからの分化誘導シグナル伝達の除去により可能になる。これに加えてさらに、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3を阻害すると、生合成能が高められ、残存していている分化が抑制される。サイトカインシグナル伝達が全く使われていないことは、遺伝的にSTAT3を欠損するES細胞を単離することで確認される。これらの知見は、ES細胞には外部からの指示を必要としない自己複製のためのプログラムが本来備わっていることを明らかにするものである。この特性は、ES細胞の潜在的腫瘍形成性の説明となるかもしれない。今回、自己複製に最小限必要な条件が示されたことで、多能性状態の正確な説明と詳細な解析のための基盤が得られた。 Full Text PDF 目次へ戻る