Letter 生理:微胞子虫Encephalitozoon cuniculiの残存ミトコンドリアによる新しいATP獲得経路 2008年5月22日 Nature 453, 7194 doi: 10.1038/nature06903 ミトコンドリアは、真核生物のミトコンドリア輸送体ファミリー(MCF)に属する輸送タンパク質を使って、ATPをはじめとするさまざまな基質を宿主細胞の細胞質と交換している。古典的細胞内共生説では、宿主の核にコードされたMCF輸送体が原始ミトコンドリアに挿入されたことが、宿主細胞が内部に閉じ込めた内部共生体からATPを収奪できるようになるための重要なステップだったとされる。微胞子虫であるEncephalitozoon cuniculiのゲノムは、MCFタンパク質の遺伝子をすべて失っている。そのため、最近見つかったマイトソームと呼ばれる微胞子虫の残存ミトコンドリアについては、タンパク質の取り込みやATPに依存した他の活動を支えるのに必要なATPを、どのようにして獲得しているのかがまだわかっていない。E. cuniculiのゲノムには、色素体や細胞内寄生細菌(リケッチア、クラミジアなど)が宿主真核細胞の細胞質からATPを取り込むために用いる、MCFとは関連のないヌクレオチド輸送体の遺伝子が4個含まれている。そこで、E. cuniculiもこれらのタンパク質を用いて宿主真核生物からATPを収奪し、細胞内絶対寄生生物としての生活を維持していると考えられる。本論文では、この仮説のように、E. cuniculiの4種類の輸送体すべてがATP輸送能力をもち、宿主細胞内で生活している場合には、そのうち3種類がE. cuniculiの表面に発現されていることを示す。4番目の輸送体は、E. cuniculiマイトソームのミトコンドリアHsp70と同じ場所に存在する。したがって、真核生物の中でもE. cuniculiは独特で、縮小進化と類似遺伝子の置換によってミトコンドリアと宿主との従来的な関係が覆されており、マイトソームがE. cuniculiの細胞質にATPを供給するのではなく、E. cuniculiの細胞質がマイトソームにATPを供給しているらしい。 Full Text PDF 目次へ戻る