Letter

生理:小腸上部の脂質は腸-脳-肝軸を刺激してグルコース産生を調節する

Nature 452, 7190 doi: 10.1038/nature06852

エネルギーとグルコースの恒常性は、それぞれ摂食と肝臓でのグルコース産生によって調節される。小腸上部は、栄養素の消化と吸収で重要な役割を果たしている。しかし、げっ歯類とヒトでは、小腸上部の脂質は、腸-脳軸を活性化することにより、摂食を抑制することもこれまでの研究で示されている。また最近では、げっ歯類で脳-肝軸が血液中の脂質を感知し、グルコース産生を抑制するのではないかと考えられている。そこで我々は、小腸上部に存在する脂質が、腸-脳-肝の神経軸を活性化してグルコースの恒常性を調節するという仮説を検証した。本論文では、小腸上部に脂質を直接投与すると、小腸上部の長鎖脂肪アシルCoA(LCFA-CoA)レベルが上昇し、グルコース産生を抑制することを示す。アシルCoA合成酵素阻害剤トリアクシンCまたは麻酔剤テトラカインを十二指腸脂質とともに注入するとグルコース産生阻害が消失することから、小腸上部のLCFA-CoAが吸収前のグルコース産生を調節していることが示された。横隔膜下での迷走神経切断または腸部の迷走神経求心路遮断では、腸と脳の間の神経回路が断絶し、小腸上部の脂質によるグルコース産生抑制が阻害される。腸の感覚神経繊維が終末する第四脳室または孤束核にN-メチル-D-アスパラギン酸イオンチャネル阻害剤MK-801を直接投与すると、小腸上部の脂質によって誘発されるグルコース産生抑制が起こらなくなる。さらに、肝臓の迷走神経を切断すると、小腸上部の脂質によるグルコース産生抑制作用が消失する。今回の知見は、小腸上部の脂質が腸-脳-肝神経軸を活性化してグルコース産生を抑制することを示しており、これまで見過ごされてきたグルコース恒常性調節経路が明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度