サンアンドレアス断層の、カリフォルニア州中部Cholame渓谷とSan Juan Bautistaの間に位置する部分は28 mm yr−1に至る速度でクリープしており、強度の高い地殻内に弱い断層が存在しうることを示す最もよい証拠となる場所でもある。カリフォルニア州北部と中部のクリープしている断層は蛇紋岩化した超塩基性岩を伴っており、サンアンドレアス断層のこの部分のクリープと低い強度の原因は蛇紋岩にあるとされることが普通である。しかしながら、蛇紋石鉱物の摩擦強度は断層強度の限界を満足させるには高すぎるし、ある条件下では不安定すべりを起こす可能性がある。本論文では、2005年にサンアンドレアス断層掘削研究計画(SAFOD)の主要掘削孔で行われた、サンアンドレアス断層の活断層と思われる部分を貫通した掘削から採取された蛇紋岩の断片中に滑石が見つかったことを報告する。滑石は、蛇紋石鉱物と断層帯から上昇してきたシリカが飽和した熱水流体との反応で形成されたもので、剪断変形した蛇紋岩で広くみられると推測される。この発見は、高温での滑石の摩擦強度は十分低く断層の剪断強度の制約条件を満たし、その本質的に安定したすべり挙動は断層クリープと一致するので重要である。したがって、深部における剪断が断層帯に混入した蛇紋岩内の滑石に富む主すべり面に沿って集中しているのであれば、サンアンドレアス断層における蛇紋岩とクリープの間をつないでいるのが滑石である可能性がある。