Letter 生態:雌の配偶者選択が雄に偏った分散の進化を推進する社会性哺乳類の一例 2007年8月16日 Nature 448, 7155 doi: 10.1038/nature06040 分散は生涯繁殖成功に重要な影響をもち、一方の性の分散の頻度が他方に比べて大きい場合が多い。群れで生活する哺乳類では、分散は通常雄に偏ってみられ、この性的偏りは理論的には、雌が見せる配偶相手の好みに対する雄の応答、雌や資源をめぐる競争、あるいは雄の近親交配回避により生じるのではないかと考えられている。社会性哺乳類について、これらの要因を同時に評価し、雄の分散の結果生じる適応度を計測した研究はこれまでなかった。今回我々は、ブチハイエナ(Crocuta crocuta)でみられる雄に偏った分散は、近親交配を回避するために進化した雌の単純な配偶者選択則に対する雄の適応的応答の結果である可能性が非常に高いことを示す。マイクロサテライト解析により、雌が自分の生後に同じ群れ内で生まれたか移入してきた成獣の雄を配偶相手として好むことが明らかになった。さらに、若い雌は配偶相手として、群れに加入してからの期間が短い雄を好み、年齢の高い雌は群れに加入してからの期間が長い雄を好んだ。雄は、若い雌の数が最も多い群れで繁殖歴を開始することにより、このような雌の配偶相手のえり好みに対応していた。その結果、雄の11%は自分の生まれた群れで繁殖歴を開始し、89%は分散した。若い雌が最も多い群れで繁殖を開始した雄は、そうしなかった雄よりも長期的な繁殖成功が高かった。こうした雌側の配偶者選択則によって、雌は血縁個体や同じ群れで生まれた雄を直接識別したり、移入してきた雄を好んだりする必要なしに、効果的に近親交配を回避できる。雌の配偶相手に対するこのような好みへの応答として、雄の分散範囲は繁殖群の人口学的構造に依存し、雌雄間の遺伝的血縁度には依存しない。 Full Text PDF 目次へ戻る