Letter 神経科学:前頭前皮質の損傷によって道徳的判断の功利主義的な傾向が増す 2007年4月19日 Nature 446, 7138 doi: 10.1038/nature05631 道徳的判断の根底にある心理学的・神経生物学的過程は、近年多くの実証的研究の対象となってきた。その中で関心を集めているのが、情緒が道徳的判断の根拠として役割を果たしているのかどうか、またそれと同時に、情緒と関連付けられている脳領域が道徳的判断にどのように関与しているかという問題である。今回我々は、情緒の中でも特に社会的情緒が正常に発動するのに必要な脳領域の1つである腹内側前頭前皮質(VMPC)を局所的に左右両側損傷した6名の患者が、ある種の道徳的ジレンマに対する判断において、異常に「功利主義的」なパターンを示すことを報告する。例えば、大勢の人の命を救うためには誰か一人の命を犠牲にしなければならない場合のように、集団の幸福を考慮せざるをえない状況において、情緒的に非常に嫌忌する行動との間で葛藤するといったジレンマである。対照的に、他の種類の道徳的ジレンマではVMPC患者の判断は正常だった。これらの知見は、特定の種類の道徳的ジレンマについては善悪の正常な判断にVMPCが不可欠であることを示しており、こうした判断の発動には情緒が必須の役割を果たしていることを裏付けている。 Full Text PDF 目次へ戻る