Letter 細胞:赤内型熱帯熱マラリア原虫におけるミトコンドリア電子伝達の特殊な役割 2007年3月1日 Nature 446, 7131 doi: 10.1038/nature05572 ミトコンドリアの起源をたどると、原核生物のみで構成されていた世界に真核生物を出現させることになった共生関係に行き着く。しかし、この共生関係には、遺伝子の絶え間ない流動が伴ってきた。ミトコンドリアゲノムからの遺伝子消失や移動の程度が真核生物の系統によって違うのは、宿主と共生者の間に現在もなお「争い」が存在していることの現れと思われる。アピコンプレックス門に属する寄生性真核生物は、このような見方を裏づけるよい例である。これに属する生物のミトコンドリアゲノムは既知のものの中で最も小さく、属によってその構成が異なり、その1つのクリプトスポリジウム属はミトコンドリアゲノムをすべて失っているらしい。本論文では、ヒトのマラリア病原体である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の赤内型(赤血球内に存在する段階)が、ピリミジン生合成に不可欠な酵素ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼの電子受容体として必要なユビキノンの再生という1つの代謝機能を果たすためだけに、ミトコンドリア電子伝達鎖の活性を維持していることを明らかにする。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)のジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼは電子受容体としてユビキノンを必要としないが、これを発現するトランスジェニック熱帯熱マラリア原虫は、ミトコンドリア電子伝達鎖の阻害剤に対して完全な耐性を示す。しかし、この原虫でもミトコンドリア膜電位の維持は不可欠であり、それは、電子伝達阻害剤の存在下で膜電位を消失させる薬剤プログアニルに対して高い感受性を示すことで示される。したがって、赤内型熱帯熱マラリア原虫では、わずか1種類の酵素を獲得するだけでミトコンドリアの電子伝達が不必要になるのである。 Full Text PDF 目次へ戻る