Letter ヒト細胞のタンパク質量の変動性とその記憶 2006年11月30日 Nature 444, 7119 doi: 10.1038/nature05316 タンパク質の発現は、細胞間の表現型の変動につながる確率論的な現象である。微生物では、細胞がもつタンパク質量の分布状態が詳しく調べられているが、ヒト細胞でのこのようなばらつきについてはわずかしかわかっていない。今回我々は、ヒト細胞でのタンパク質量のばらつきを調べると同時に、その時間的変動の動態も明らかにした。また、タンパク質の量が平均よりも高い細胞がやがては平均以下に下がるのかどうか、またもし下がるとすれば、こうした「混合」がどのくらいの時間スケールで起こるのかも調べた。生きたヒト細胞で、20種類の内在性タンパク質を染色体遺伝子座で黄色蛍光タンパク質遺伝子を用いて標識し、その時間的変動を測定した。変動の標準偏差は、タンパク質によって異なるが、平均値の約15〜30%の範囲だった。タンパク質量の高い状態と低い状態の間の「混合」はすべてのタンパク質で起こるが、多くのタンパク質で、それにかかる時間は40時間以上と2細胞世代よりも長かった。また、2つのタンパク質を対にしてそれぞれ異なる色で標識して調べ、同じ生物経路にかかわるタンパク質の量は、別の経路のタンパク質に比べ、はるかに相関性が高いことを見いだした。今回判明したタンパク質量の持続的な記憶が、細胞の挙動にみられる個性の基盤となっている可能性があり、こうした記憶が細胞集団の全構成メンバーにシグナルが作用するのに必要な時間スケールを決めているのかもしれない。 Full Text PDF 目次へ戻る