Letter
海洋:最終退氷期における東部太平洋の寒冷化と 大西洋の鉛直循環
Nature 443, 7113 doi: 10.1038/nature05222
氷河時代における千年スケールの地球気候変動が熱帯における大気- 海洋フイードバックによって始まったのか、あるいは大西洋の熱塩循環の変化によって始まったのかを解く手がかりが、熱帯太平洋表層の海洋条件にある可能性がある。ハインリッヒ・イベントと千年スケールの寒冷イベント(亜氷期)の際の大西洋寒冷期は、熱帯大西洋と南米の気候変動や、インドと東アジアのモンスーン系と結びつけられてきたが、熱帯太平洋の海面水温とは関連づけられていなかった。本論文では、アルケノン不飽和度測定値から得られた東部熱帯太平洋における海面水温の高分解能の記録を示す。今回のデータから、ハインリッヒ・イベント1における大西洋の南北方向の鉛直循環の休止と、年代決定の不確実性の範囲内で同時期に起こった1℃の水温低下、またヤンガー・ドライアイス・イベントの間の鉛直循環の比較的小さな低下と同時期に起こった0.5℃の小さな水温低下が明らかになった。この2 つの寒冷化イベントは、230Th で規格化した炭素の埋没フラックスから推測された海 洋表層の生産力最大期と一致し、この時期に湧昇が盛んになったことを示唆している。熱帯太平洋の寒冷化が退氷期における2 つの北大西洋寒冷期と同時に生じていることから、これらの千年スケールの気候変動は、以前に示唆されたように熱帯における大気- 海洋相互作用によって増幅された可能性はあるが、海洋の熱塩循環の再構成によって駆動されたのであろうと考えられる。

