Letter

栄養ストレス診断で明らかになった熱帯太平洋の生産力制御要因

Nature 442, 7106 doi: 10.1038/nature05083

世界の主要な高硝酸塩・低クロロフィル(HNLC)海域では赤潮原因珪藻の増殖が利用可能な鉄の量によって制限されていることが、in situ鉄添加実験で明らかにされている。しかし、こうした操作的実験は、最大規模のものでも海盆のごく一部にしか対応せず、観察結果は本来その場所に優占する集団の増殖ではなく希少種の増殖に強く影響される。今回我々は、植物プランクトンがもつ独特の蛍光特性を栄養ストレスに特異的な生理的応答と関連づけ、この関係を用いて、熱帯太平洋の植物プランクトン増殖の制約要因をかつてない空間的規模で検討した。12年間にわたる蛍光測定結果に基づき、我々はこの海域を生態生理学的様相から大きく3つに区分けした。赤道付近およびそれ以南では、HNLC海域でも貧栄養海域でも鉄が植物プランクトン増殖の制御に重要な役割を担っているが、赤道以北では、窒素および動物プランクトンによる捕食がバイオマス生産を制御する主たる要因であることがわかった。今回の知見を衛星クロロフィル画像の解析に用いた結果、熱帯太平洋海盆の生産力は従来の推定値を1.2〜2.5PgC yr-1下回ると考えられた。この差は、エルニーニョからラニーニャへの史上最大の転換に伴って生じた海洋生産力の全地球的変化に匹敵するものである。

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