Letter 宿主-病原体系で生じた「共有地の悲劇」では移動を局所に制限することで競争の抑制が促される 2006年7月6日 Nature 442, 7098 doi: 10.1038/nature04864 分断化された個体群は興味深い二面性をもつ。分集団が絶滅しがちな場合でも、局所的な絶滅が同調しないことや再定住により、大域的な永続性が実現される。そのような場合、個体の移動は諸刃の剣となる。すなわち、あまりにも移動が少ないと絶滅パッチへの再定住が妨げられるし、逆にあまりにも移動が多いと分集団どうしを同調させて大域的な絶滅の可能性を高めることになる。この「諸刃」に例えられる両端の状況は、実験個体群間での移出入率を操作することにより調べられてきた。しかしながら、分断化された個体群の進化生態学が移動パターンによってどのような影響を受けるかを調べた実験は、今までのところほとんどない。今回我々は、大規模な分集団ネットワークの形に分散させた、宿主の大腸菌(Escherichia coli)と病原体のウイルス(T4大腸菌ファージ)からなる群集内では、移動パターンが共存にも進化にも影響を及ぼすことを示す。特に、異なる移動パターンが病原体の異なる戦略を進化させることがわかり、我々はこれらを「強欲型」、「慎重型」と名づけた。これらの戦略は「共有地の悲劇」の典型である。すなわち、強欲型ファージは共有する宿主資源から慎重型を排除するが、慎重型ファージは強欲型と一緒にいないほうが増殖率が高い。移動が空間的に制限される場合には慎重型ファージが優占し、移動が制限されない場合には強欲型ファージが進化することがわかった。したがって、「新・共有地の悲劇」が自制する側に有利な形で決着するかどうかは、移動パターンのみで決まることになる。 Full Text PDF 目次へ戻る