Letter NURFのBPTF PHDフィンガーによるヒストンH3K4me3の部位特異的な読み出しの分子基盤 2006年7月6日 Nature 442, 7098 doi: 10.1038/nature04802 クロマチンでは、領域によってヒストンの特定のリシン残基が選択的にモノメチル化、ジメチル化あるいはトリメチル化されているのが見つかっており、このような目印がヘテロクロマチンの形成をはじめ、X染色体不活性化や転写の調節といった特殊な生物学的機能にかかわることが示唆される。クロマチンの生物学的働きの研究では主に、特定のメチル化状態と機能に影響する特定の読み出し情報との結びつきを明らかにする努力がなされてきた。例えば、リシン4がトリメチル化されたヒストンH3(H3K4me3)は活性化された遺伝子の転写開始部位に結合しているが、H3K4me3尾部の特異的認識にかかわる「エフェクター」分子についてはほとんど解明されていない。今回我々は、ヒトのATP依存性クロマチンリモデリング複合体NURF(nucleosome remodeling factor)の最大のサブユニットであるヒトBPTF(bromodomain and PHD domain transcription factor)のPHD(plant homeodomain)フィンガーがH3(1-15)K4me3(K4がトリメチル化されたヒストンH3の残基1-15)を特異的に認識する仕組みの分子基盤を明らかにした。我々は結晶学的手法とNMRにより、BPTFのブロモドメインに近接したPHDフィンガーの、遊離の状態とH3(1-15)K4me3に結合した状態の構造を解明した。H3(1-15)K4me3は、PHDフィンガー表面にある逆平行βシート構造を介して相互作用する。このとき、アルギニン2(R2)とK4me3の長い側鎖は、近くにあらかじめ形成されていた表面ポケットにきちんとはまり込み、不変のトリプトファンを両側から挟んでいる。このように隣接していないR2とK4me3がホチキスのような役割を果たすのが観察されたことにより、H3K4me3の部位特異性が分子レベルで説明できる。結合実験によって、BPTFのPHDフィンガーは、K4me2を含んだH3ペプチドよりもK4me3を含むペプチドに対する結合選択性がやや高く、モノメチル化K4や修飾されていないK4を含むペプチドには結合しないことが明らかになった。また、H3(1-15)K4me3とPHDフィンガー点突然変異体との結合を調べ、不可欠な特異性決定残基を同定した。これらの結果は、PHDフィンガーが、数多くのクロマチン結合タンパク質にみられる、これまで性質のわかっていなかったクロマチン結合モジュールであることを示している。 Full Text PDF 目次へ戻る