Letter チアミンピロリン酸を感知するリボスイッチによる遺伝子調節の構造基盤 2006年6月29日 Nature 441, 7097 doi: 10.1038/nature04740 リボスイッチは代謝産物を感知するRNAで、メッセンジャーRNAの非コード領域に位置する場合が多く、代謝産物に関係するタンパク質の合成を制御する。本論文では、大腸菌のthiMmRNAにあって補酵素チアミンピロリン酸(TPP)に反応するリボスイッチドメインについて、分解能2.05 Åでの結晶構造を明らかにする。TPPはビタミンB1の活性型で、タンパク質が触媒する多くの反応に不可欠である。生物界の3つのドメインすべてに属する生物(細菌や植物、菌類など)が、チアミンやそのリン酸化誘導体の取り込み・合成にかかわる遺伝子の制御においてTPPを感知するリボスイッチを使っており、リボスイッチは代謝産物を感知するRNA調節機構として最も広く分布している。今回明らかになった構造ではRNAが複雑に折りたたまれており、1つのサブドメインはTPPの4-アミノ-5-ヒドロキシメチル-2-メチルピリミジン部分がはまり込むポケットを形成している。また別のサブドメインは二価金属イオンと水分子とを橋渡しに用いてTPPのピロリン酸部分と結合する広めのポケットを形成している。この2つのポケットは、伸びたコンホメーションをとったTPPを認識する分子測定装置として機能できるような位置にある。TPPの中央にあるチアゾール部位はこのRNAによっては認識されないことから、抗生物質ピリチアミンピロリン酸がこのリボスイッチを標的としてチアミン代謝遺伝子の発現を抑制する理由を説明できる。天然のリガンドTPPと薬理作用をもつリガンド類似体はどちらも、mRNAがコードするタンパク質の合成を調節するためにリボスイッチが用いている二次構造要素、三次構造要素を安定化する。また今回明らかになった構造は、どのようにして折りたたまれたRNAが、タンパク質性の遺伝因子が作る結合ポケットに劣らないほど正確な結合ポケットを作ることができるのかについて考察する手がかりにもなる。 Full Text PDF 目次へ戻る