Letter 南大洋の生物地球化学的分水界 2006年6月22日 Nature 441, 7096 doi: 10.1038/nature04883 モデリング研究によって、大気-海洋間におけるCO2の平衡と全球の生物生産には、南大洋の栄養サイクルと炭素サイクルが主要な役割を果たしていることが示されている。またボックスモデルによる研究から、高緯度水域における栄養利用が増加すると大気中の二酸化炭素分圧(pCO2)が大きく低下することが初めて指摘された。この初期の研究によって、2つの重要な考え方が導かれた。すなわち、高緯度水域は低緯度水域と比べてかなり面積が小さいにもかかわらず、大気中のpCO2の決定に低緯度水域より重要であること、そして栄養利用と大気中のpCO2は密接に結びついていることである。その後行われた大循環モデルによるシミュレーションでは、南大洋が産業革命以前に生じた大気中のCO2を制御するうえで最も重要な高緯度水域であることが示されたが、それは南大洋が、より大量の水が存在する深海層の「ふた」として働くためである。またそのほかの研究では、人為起源の二酸化炭素の取り込みと貯蔵、および全球的な生物生産の制御における南大洋の極めて重要な役割が指摘されている。本論文では、海洋大循環モデルで表層の栄養レベルの低下を大きくすることにより、大気-海洋間のCO2の平衡と生物的移出生産にとって南大洋の特定の水域がほかの水域よりも重要となるかどうかを決定する機構を詳しく調べた。我々は大気中のCO2と全球の生物的移出生産はそれぞれ主に異なる南大洋水域によって制御されていることを示す。大気-海洋間のCO2平衡は、南極深層水形成水域における生物ポンプと循環によって主に制御されているが、これに対して全球的な移出生産は、亜南極中層水とモード水の形成水域における生物ポンプと循環によって主に制御されている。南極海と亜南極海を隔てるこの生物地球化学的分水界の存在は、気候変動あるいは人間の介入が、これら2つの海の一方を大きく変えることなく、他方を変えうる可能性を示唆している。 Full Text PDF 目次へ戻る