Letter

老齢マウスの心臓の遺伝子発現にみられる細胞間変動の増大

Nature 441, 7096 doi: 10.1038/nature04844

体細胞DNA損傷の蓄積は、後生動物における老化の原因に関係すると言われてきた。DNA損傷の増加によって細胞に変性と死をもたらしうる機序の1つに、遺伝子発現の確率論的な調節不能がある。本論文では、若齢および老齢マウスの新鮮な心臓から心臓細胞を単離し、その後、ハウスキーピング遺伝子や心臓に特異的な遺伝子の全mRNAの増幅とmRNA量を定量することにより、老齢の細胞では転写ノイズが増大するかどうかを直接検証した。若齢マウスの心臓から得られた心筋細胞間でも遺伝子の発現量は既にばらついていたが、老齢マウスではこのような不均一性は有意に増大した。我々は以前に、老齢マウスの心臓では、ゲノムの再編成などの変異が増大することを明らかにしている。遺伝子発現におけるノイズ(stochasticity)の増大がゲノム損傷の増加に起因する可能性を確認するため、我々は培養マウス胚性線維芽細胞を過酸化水素で処理した。この処理により、細胞間での遺伝子発現の変動が有意に増大し、さらにこれはlacZレポーター遺伝子座のゲノム再編成変異の誘導および持続と同時に進行することが明らかになった。今回の結果は、老化過程の確率論的な特性を強調するものであり、多細胞生物の組織における老化に関連した細胞の変性と死にかかわる機序を説明するものとなりうると考えられる。

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