Letter ヒトとチンパンジーにみられる苦味感受性は独立に進化した 2006年4月13日 Nature 440, 7086 doi: 10.1038/nature04655 ヒトと同じくチンパンジーでも苦味物質であるフェニルチオカルバミド(PTC)に対する味覚感受性に個体差があることは、65年以上前に報告された。この現象は平衡多型が両種で共有された結果であると考えられ、類人猿における平衡化選択の作用例として初めての、そして今では古典となっている事例であった。ヒトでは、PTC味覚感受性の個人差は主に、TAS2R38座位にある2つの広くみられる対立遺伝子の分離によって支配されている。これらの対立遺伝子のコードする受容体は多型で、リガンド結合親和性が異なっている。本論文では、チンパンジーにおけるPTC味覚感受性もやはり、TAS2R38の2つの広くみられる対立遺伝子によって支配されていることを示す。ただし、これらの対立遺伝子はどちらも、ヒトと共有されていない。ヒトの場合と異なり、これらでは開始コドンが変異しているため、下流の別の開始コドンが使われて配列の短い変異受容体が作られる。この変異受容体はin vitroでPTCに反応できない。飼育チンパンジーの調査用集団でPTC感受性の関連性検定を行ったところ、in vivoでチンパンジーのTAS2R38遺伝子型から味覚感受性の状態を正確に予測できることが実証された。したがって、Fisherたちの観察結果は正しかったが、その説明は誤りだった。ヒトとチンパンジーでは、PTC受容体の多型変異体が苦味物質の味覚感受性の個体差に関与している点は共通しているが、この個体差の分子的な基盤は2種で独立に、それぞれ1回ずつ計2回生じた。 Full Text PDF 目次へ戻る