Letter

最小の代謝ネットワークの進化における偶然と必然

Nature 440, 7084 doi: 10.1038/nature04568

ある生物の遺伝子含量からその生活様式の諸相を推測することは可能だが、その逆も可能なのだろうか。今回我々は、内部共生細菌の縮小されたゲノムの進化のモデルを作成することで、この問題の考察を行った。これらの細菌にみられる遺伝子含量の多様性は、選択圧の変動と、偶然性に左右される代替経路喪失との双方を反映したものかもしれない。我々は、in silicoで再現した大腸菌(Escherichia coli)の代謝ネットワークを用い、環境条件を操作しながら複数遺伝子の連続的な喪失を繰り返しシミュレーションすることで、偶然性の果たす役割を検証した。結果として生じた最小ネットワークは、遺伝子含量も遺伝子数も一定していない。したがって、偶然性だけによって、部分的に異なる代謝が進化しうることになる。しかしシミュレーション結果では、中核となる代謝はまさしく保存されており、こうした代謝は狭義の細胞内共生細菌でかなり多くみられる。さらに、生活様式に基づく最小ネットワークどうしの違いは予想することができる。我々は、個別の環境条件をシミュレーションすることで、Buchnera aphidicolaおよびWigglesworthia glossinidiaの遺伝子含量の進化を、80%を超える精度でモデル化することができた。我々の考えでは、少なくとも今回考察した特定の諸例について、ある生物の遺伝子含量は系統的に距離のある祖先生物や現在の生活様式に関する情報を使って予測できる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度