Letter ひげの色力学によって生じる利他行動 2006年3月30日 Nature 440, 7084 doi: 10.1038/nature04387 利他行動、つまり自身の適応度を一部犠牲にして他者に利得を与える行動の進化は、ダーウィンの進化論が抱えるパラドックスとなっている。近縁個体と多くの相互作用があって、利他行動の利得を受け取るのがほかの個体にある利他的な遺伝子のコピーである場合は、血縁選択とよばれる機構が働いており、このパラドックスは解消される。しかし、利他的個体の識別は、利他行動を進化させる代替的経路となる可能性がある。おそらく最も単純な識別機構は、「緑ひげ」のように外からはっきり見える遺伝性のタグを使うことである。こうした遺伝子は実際既に報告されているものの、単一の遺伝子が利他行動と識別可能なタグとを担えるとは思えないため、この「緑ひげ効果」はしばしば退けられてきた。今回我々は、緑ひげ効果のモデルを作成し、識別と利他行動が常に一緒に遺伝する場合には、動態が非常に不安定となって利他行動の消失に至ることを見いだした。対照的に、ゆるく連携する別々の遺伝子によってこの効果が生じる場合には、同時にさまざまな「ひげ」の色が現れる「ひげの色力学」によって利他行動が促進される。この「ひげの色力学」により、たとえ構造化の弱い個体群であっても利他行動の存続が可能となり、また、利他的形質と識別タグが流動的に連結した形をとる「緑ひげ効果」は従来考えられていたよりも普及している可能性が出てくる。 Full Text PDF 目次へ戻る