細胞がさまざまなストレスにさらされると、多くの場合、熱ショックタンパク質(HSP、分子シャペロンとも言う)とよばれるタンパク質群の誘導が起こる。Hsp70は非常に誘導性の高い分子シャペロンの1つだが、細胞の構成的な活動が行えるような生理的条件の下では、Hsp70の発現は低レベルに保たれなければならない。熱ショック転写因子1(HSF1)はHSP遺伝子発現の転写調節因子だが、HSF1活性が減弱したときにどのような仕組みで新たに合成されたHSPが基底レベルに戻るのかは、ほとんどわかっていない。CHIP(carboxy terminus of Hsp70-binding protein)は、2つの機能をもつ補助シャペロン/ユビキチンリガーゼであり、シャペロンのさまざまな基質をプロテアソームにより分解させる。今回我々は、CHIPが急性ストレスの際にHsp70の誘導を促すだけでなく、ストレスからの回復の際にはHsp70の代謝回転にもかかわることを明らかにする。この二相性の調節の中心となるのは基質依存性で、CHIPはシャペロンに結合した基質を選択的にユビキチン化するが、誤って折り畳まれた基質がなくなってしまうと、今度はHsp70がCHIPの働きによってユビキチン-プロテアソーム系の標的となり、分解される。CHIPが関係するシャペロンアダプターとその結合した基質の連続的な触媒反応は、細胞質内のタンパク質の折り畳み状況に合わせてシャペロンレベルを適切に調整することによってホメオスタシスを維持する巧みな機構である。