Letter

カエルの超音波コミュニケーション

Nature 440, 7082 doi: 10.1038/nature04416

仲間どうしの交信や反響定位を行うために超音波(周波数20 kHz以上)を発生し感知する能力は、脊椎動物では小翼手亜目コウモリ、クジラ類および一部のげっ歯類でのみ知られており、この能力が哺乳類に限られている可能性が考えられる。両生類、爬虫類、ほとんどの鳥類の聴力は概して貧弱で、約12 kHz以下の音を発生し感知する能力しかない。今回我々は、両生類である、中国黄山温泉産のconcave-eared torrent frog (Amolops tormotus)で超音波コミュニケーションが行われている証拠を報告する。 A. tormotusの雄は、顕著な周波数変化を伴う、鳥の歌のようなさまざまな鳴き方をし、その音声は超音波帯域のスペクトルエネルギーを含むことが多い。A. tormotusが、近くの流れが速い小川で発生する帯域の広いバックグラウンドノイズによる遮へいを避けるために超音波を用いてコミュニケーションしているのか、もしくは超音波は発声メカニズムの副産物に過ぎないのかを検証するために、カエルの生息地で音声再生実験を行った。その結果、A. tormotusの鳴き声の可聴音波成分だけでなく、超音波成分も雄の音声応答を引き起こしうることが明らかになった。中脳の音声処理中枢からの電気生理学的記録により、このカエルおよび同様の環境制約に直面している同所種が超音波聴取能力をもつことが確かめられた。広告音の倍音成分とカエルの聴覚感度の両方に超音波域への並はずれた広がりがみられるが、これは生息地域近くの小川からの低周波成分が多い、大きな環境騒音に応じてこの2つが共進化してきた結果と思われる。小翼手亜目コウモリやクジラ類は音声コミュニケーションに用いる周波数帯域の混雑をできるだけ少なくし、また暗所での狩りの効率を向上させるために超音波聴取能力が進化しているが、両生類はこれらとは独立な進化的系統であるので、このカエルでの超音波知覚能力は独立進化の新しい一例である。

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