グリーンランド氷床の質量バランスは、流出氷河の流動速度により部分的に決まることから、グリーンランド氷河の最近の速度変化を理解することは重要である。Jakobshavn Isbræ氷河は、グリーンランドで最大の流出氷河で、氷床面積の約6.5パーセントを流出させている。この氷河は1991年以降繰り返し調査されてきた。本論文では、リモートセンシングのデータを用いて1992年から2003年までのJakobshavn Isbræ氷河の流動速度を観測した結果を報告する。この期間は速度の変動が大きく、1985年には流動速度が6,700 m yr-1だったのに対し、1992年には5,700 m yr-1にまで低下し、さらに、その後速度が上がり、2000年に9,400 m yr-1、2003年には12,600 m yr-1となった。こういった変動は、1990年代初期に氷河が厚くなり、それ以降急に薄くなったことを示す、これまで得られた証拠と矛盾しない。流速の速い氷河は、十年未満のタイムスケールで氷の流出を有意に変化させることがあり、変化しつつある気候にすばやく応答する可能性が少なくとも存在することを、今回の観測結果は示している。