Letter 生態:熱帯雨林に生息する野生チンパンジーの死亡原因は炭疽であった 2004年7月22日 Nature 430, 6998 doi: 10.1038/nature02722 感染症は、生息域減少や狩猟に加えて、現在生き残っている大型類人猿の野生個体群の生存を脅かす存在となってきた。感染症病原体について解明されていることは比較的少ない。我々は、コートジボワールのタイ国立公園に生息する3つの野生チンパンジー(Pan troglodytes verus)個体群で9か月にわたって見られた異例の大量突然死について調べた。本論文では、病理学・細胞学・分子学を組み合わせた調査により、少なくとも6個体については死因が炭疽菌(Bacillus anthracis)であることを突き止めた。またこれまで炭疽菌の潜伏が知られていなかった熱帯雨林に生息するヒト以外の野生霊長類で、炭疽菌が見つかる可能性があることを示す。炭疽は反芻動物に感染する急性疾患だが、ヒトなど他の哺乳類でも大量の芽胞を接触・吸入したり、感染動物の肉を食べたりすると感染することがある。肺炭疽と腸炭疽は急な発症、発熱、敗血症を特徴とし、早期に抗生物質投与をしなければ致死率は高い。今回の結果からみて、流行性疾患は野生大型類人猿個体群にとって少なからぬ脅威となり、また狩猟肉の摂食を通じてヒトの健康を脅かすことにもなると考えられる。 Full Text PDF 目次へ戻る