Letter 進化:乱婚制の種で単一遺伝子の発現操作により配偶相手に対する好みが強まった 2004年6月17日 Nature 429, 6993 doi: 10.1038/nature02539 複雑な行動を進化させる分子レベルの機構については、まだ解明が進んでいない。哺乳類のハタネズミ属(Microtus)は社会的行動の進化を調べるための格好のモデルとなっている。プレーリーハタネズミ(Microtus ochrogaster)は自然界では一夫一妻制の社会構造をとるが、これにごく近縁なアメリカハタネズミ(Microtus pennsylvanicus)は単独生活型で、複婚制である。プレーリーハタネズミの雄では、バソプレッシンとドーパミンの両方が前脳腹側領域で働いて、「つがいの絆」の形成として知られる成獣配偶者どうしの選択的な強い結びつきを調節しており、このことは研究室で配偶相手の選り好みによって評価されている。一夫一妻制のハタネズミ種では乱婚制の種に比べて前脳腹側領域でのバソプレッシンV1a受容体(V1aR)の発現量が高いが、ドーパミン受容体の分布は両種間で比較的保存されている。今回我々は、ウイルスベクターを使ってV1aR遺伝子を前脳腹側領域に導入することで、社会的にみて乱婚制のアメリカハタネズミの配偶相手に対する好みを実質的に強化できた。これは本来の遺伝子回路や神経回路全体が働く中で単一遺伝子の発現を変化させるだけで、社会的行動が大きく変わりうることを示しており、複雑な社会的行動を急速に進化させた可能性のある分子機構のひとつと思われる。 Full Text PDF 目次へ戻る