ジアルジア(Giardia intestinalis、G. lamblia;ランブル鞭毛虫は同種異名)は世界に最も広く蔓延する腸疾患原虫(病原性原生動物)の1つであり、年間何十万件もの下痢症例を引き起こしている。ジアルジアはヒゲハラムシ(ディプロモナス)類の仲間で、太古から生き延びた原生生物群だとみなされることが多い。こうした動物群が原始的だと考えられる理由は、真核生物に通常ある細胞小器官(ミトコンドリアやペルオキシソームなど)の欠如や、未発達の内膜系の存在、何通りかの遺伝子系統樹で根元近くで枝分かれすることだとされる。ジアルジアでミトコンドリア由来のものと思われる核内遺伝子が発見され、また最近、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)や微胞子虫類Trachipleistophora hominisなどミトコンドリアをもたない原生動物でミトコンドリア残存小器官が見つかった。つまり、真核生物がミトコンドリアをもたないという構造が原始的であるということではなく、むしろ省略化する進化の結果であることを示している。今回我々は、in vitroタンパク質復元分析とIscSとIscU(鉄−硫黄クラスター生合成に関与する2種類のミトコンドリアマーカータンパク質)の特異的抗体を使って、ジアルジアには二重膜で包まれたミトコンドリア残存小器官(ミトソーム;mitosome)があり、これが鉄−硫黄タンパク質成熟で機能を果たしていることを示す。我々の得た結果は、ジアルジアが本来は無ミトコンドリア性でないこと、そして、原初ミトコンドリアである細胞内共生生物に由来する機能的小器官を保持してきたことを意味している。 Top of page