Letter 化学:水溶液中における車輪型Mo154酸化物クラスターのベシクルへの自己集合 2003年11月6日 Nature 426, 6962 doi: 10.1038/nature02036 界面活性剤や膜脂質は、両親媒性であるため、すなわち構造の一部が極性環境に引かれ、別の部分が非極性環境に引かれるため、容易に集合してミセル、リポソーム、中空のベシクルなどの集合体構造をとる。集合体構造への自己集合は、数百年前から知られているモリブデンブルー溶液に例示されるように、ポリオキソメタレート化学においても生じる。これらの溶液中にナノメートルサイズの金属酸化物凝集体が存在していることは長年にわたって認められてきたが、これらの凝集体の組成や形成過程の解明は困難であることが分かっていた。最近の研究によって、{Mo154}型の個々の車輪型混合原子価ポリオキソモリブデン酸塩クラスターが集合して、球状構造体をはじめとするナノメートルサイズの明確な凝集体になることが示された。今回我々は、{Mo154}車輪型クラスター約1,165個で構成される平均半径約45 nmのほぼ単分散の中空球状構造体について、光散乱データおよび透過型電子顕微鏡像を報告する。それらのクラスターはベシクル表面上で横倒しになっており、均一に分散しているようである。我々が観察している構造体は、従来の脂質ベシクルとは異なり、疎水性相互作用によって安定化されているわけではない。その代わり、短距離力であるファンデルワールス引力と長距離力である静電斥力との間の微妙な相互作用によってポリオキソモリブデン酸塩系ベシクルが形成され、車輪型クラスター間およびベシクル内部に封入された水分子が関与する水素結合に起因して肝要な安定化がさらに起こると我々は考えている。 Full Text PDF 目次へ戻る