Prochlorococcus属はもっとも数の多い光合成生物だが、この属が海洋中で極めて広範な深度分布を示すのは、弱光環境または強光環境のニッチのいずれかに適応した異なる遺伝子型が存在するためである。この属で主要なクロロフィル結合性集光アンテナタンパク質をコードするpcb遺伝子は、弱光環境に適応した株では複数コピーが存在するが、強光環境に適応した株では1コピーしか存在しない。しかし、このように分化した理由は解明されていない。本論文では、中程度の弱光環境に適応した株であるProchlorococcus sp. MIT 9313が、光化学系I(PSI)を構成するアンテナタンパク質をコードする1個の鉄ストレス誘導性pcb遺伝子(シアノバクテリアのisiA遺伝子に対応する)と、光化学系II(PSII)のアンテナタンパク質をコードする構成的に発現されるpcb遺伝子をもつことを報告する。これに対して極めて弱い光環境に適応した株であるSS120は、構成的なPSIおよびPSIIのアンテナをコードする7個のpcb遺伝子と、1個のPSI鉄調節型pcb遺伝子をもつが、強光環境に適応した株MED4は構成的なPSIIアンテナしかもたない。したがってProchlorococcusの弱光環境に対する適応は、植物および緑藻類のCabタンパク質に対応するPcbタンパク質のコピー数増加および特殊化を誘導したと考えられる。