Letter

生態:チョウでは雄の交配成功度に及ぼす近親交配の影響が捕獲によって覆い隠される

Nature 424, 6945 doi: 10.1038/nature01713

孤立した小規模な個体群はコアとなる個体群よりも遺伝的多様性が低いことが多く、それがホモ接合性につながって長期の生存を妨げる可能性がある。血縁個体どうしの交配で生物の適応度が減少することは、捕獲した動物や実験動物の例でよく知られている。こうした近親交配は、生活史にかかわる形質や生存に非常に有害な影響を及ぼす可能性があり、個体群保全の成否を大きく左右することもある。野生の状態では系図をつくるのが難しいため、ほとんどの野外研究では、ホモ接合性が増すにつれて適応度が低下することをマーカーとなる遺伝子座を使って立証してきた。野生での近親交配の影響を実験的に調べたり、実験室で得られた観察と野外での状況を比較したりした研究は非常に少ない。我々は今回、交尾に際してマーカー用の「粉末」が移動することを利用し、捕獲されてかごの中で近親交配した雄のチョウでは交配成功度の減少はわずかだが、飛翔を拘束しない条件下ではこの減少が大きく目立つようになることを報告する。我々の得た結果は、交尾パターンの根底をなす行動が過去の近親交配によって、あるいは実験上の何らかの制限条件によって、大きく影響を受けうることを示すものであり、そのため生物保全や性選択研究にとって重要な意味合いをもってくる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度