ほとんどの大洋中央海嶺下の液相生成モデルは、拡大速度が極めて遅いところ(両側拡大速度<20 mm yr-1)では液相生成が顕著に減少すると予想しており、その結果、海洋地殻が薄くなることを予想している。長さ1,800 kmの北極のガッケル大洋中央海嶺は、両側拡大速度が6から13 mm yr-1と地球上の大洋中央海嶺拡大系の中で最も遅いので、そのようなモデルを検証する理想的な場所である。さらに、他の海嶺系とは対照的にガッケル海嶺の拡大方向は斜めになっておらず、海嶺中央谷が主要なトランスフォーム断層によって分岐していない。本論文では、ガッケル海嶺の中央谷に沿って地殻の厚さが(拡大速度が中程度か、あるいはより速い大洋中央海嶺における通常の値が7 km程度であるのに対し)1.9 kmから3.3 kmという例外的に薄い地殻が存在する地震学的証拠を提示する。中央谷を横切ってほぼ8,300 kmにわたり密に作成した航空磁気測量プロファイルは、海嶺に沿って不連続的に火山中心が存在することを示していて、これは密に集中して3次元的にマグマが供給されていることの証拠と解釈できる。このような噴火中心の跡の中では、海嶺軸から離れて約2,500万年の地殻年代までたどれるものもあり、このようなマグマ生成及び輸送系はこの時間スケールにわたり安定であったことを示唆している。