Letter 細胞:マウス胚性幹細胞の類腫瘍特性を促進しているERas 2003年5月29日 Nature 423, 6939 doi: 10.1038/nature01646 胚性幹(ES)細胞は、哺乳類の初期胚に由来する多能性細胞である。老化を来たさず高速で増殖することから、幹細胞治療への応用が期待されているが、移植した際に生じる腫瘍(奇形腫)は、臨床応用の妨げとなっている。染色体に異常のないES細胞が、なぜ類腫瘍特性を示すのかは、ほとんど解明されていない。本論文では、マウスのES細胞がRas類似遺伝子を特異的に発現していることを報告する。我々はこの遺伝子をERasと名づけた。さらに我々は、偽遺伝子と考えられているヒトHRasp遺伝子には報告されたような塩基置換は存在せず、実はヒトERas相同遺伝子であることも明らかにした。このタンパク質にはRasの活性型変異体と同一のアミノ酸残基が含まれ、NIH3T3細胞に悪性形質転換を誘導する。ERasはホスファチジルイノシトール-3-OHキナーゼ(PI3キナーゼ)と相互作用するが、Rafとは相互作用しない。ERas遺伝子欠損ES細胞では分化多能性は保たれているが、増殖能と腫瘍形成能は著しく低下する。この低下は、ERas cDNAの発現や活性型のPI3キナーゼによって回復する。これらの結果から、ES細胞の類腫瘍増殖には、形質転換能を有する癌遺伝子ERasが重要な役割を果たしているとの結論が得られた。 Full Text PDF 目次へ戻る