シトシンのメチル化は真核生物で広くみられるが普遍的ではない。哺乳類およびアカパンカビの1種のNeurospora crassaでは、シトシンの約2から3%がメチル化されている。哺乳類におけるメチル化は、数少ないCpGジヌクレオチドにほぼ集中しており、大部分のCpGがメチル化されている。一方、アカパンカビにおけるメチル化は、CpGジヌクレオチドに起こりやすいというわけではなく、ゲノムの大部分はメチル化されていない。DNAのメチル化は、哺乳類では不可欠であるが、アカパンカビでは絶対必要というわけではないので、この単純な真核生物は、メチル化の研究では使いやすいといえる。最近の研究では、アカパンカビにおけるDNAのメチル化が、ヒストンH3メチル基転移酵素DIM-5によって誘導されるDNAメチル基転移酵素の一種DIM-2に依存することが示されているが、メチル化の細胞機能および進化上の役割はほとんど解明されていない。Neurospora crassaでは、これまで4種類のメチル化配列しか報告されていないので、今回、メチル基結合ドメインを対象としたアガロースクロマトグラフィー法でゲノムのメチル化成分を単離した。DNA配列の解析から、ゲノムのメチル化成分はほとんど例外なく、repeat-induced point mutation(RIP)を受けたトランスポゾンの残存物であることがわかった。RIPは、重複配列に変異を導入するゲノム防御系の一つである。